Storyteller
ボローニャ・チルドレンズ・ブックフェアディレクター
エレナ・パゾーリ
イタリア、ボローニャ出身。60年の歴史を持つ絵本専門の国際見本市「ボローニャ・チルドレンズ・ブックフェア」のディレクターを務める。1987年より同フェアの企画に携わっており、同ブックフェアが主催する「ボローニャ国際絵本原画展」にも尽力。同展は1981年より板橋区立美術館にて開催されている。また、同ブックフェアからは板橋区の「いたばしボローニャ絵本館」へ多くの本が寄贈されている。
子どもを成長させる絵本のもつ可能性
板橋区の友好都市であるイタリアのボローニャで開催される、ボローニャ・チルドレンズ・ブックフェア。そこでは世界中から集まってきた児童書のためのイラストを対象にしたコンクールが開催されており、入選した作品はボローニャ国際絵本原画展に展示されます。エレナさんは2001年からブックフェアのディレクターになり、2003年に初めて来日されました。その際、1981年から原画展が巡回している板橋区立美術館を訪れ、絵本を積極的に発信している素晴らしい場所だと感銘を受けたそうです。
「元々、フェアの中の一企画でしかなかった原画展が、美術館という芸術のための施設で開催されているのを目の当たりにし、とても感動しました。美術館というコンテクストの中に絵本が置かれることで、絵本の芸術的価値が広く認められ、アート展としての地位向上へとつながったのです」
エレナさんはブックフェアを通じてSDGs啓発にも積極的に取り組まれてきました。最近では国際連合と協同し、ブックフェア会場に集まったさまざまな国の人たちが母語で国際憲章を読み上げるイベントや、SDGsにまつわる賞の創設、SDG Book Club※の広報の活動などを行われています。エレナさんはブックフェアや絵本が持つ力に関してこのように述べられました。
「この10年間の傾向として、戦争や平和、そして移民などの世界的な問題を扱う絵本が増えてきており、SDGs達成のための大切な役割を絵本が担っていることを感じます。それはやはり、絵本には他者を理解するきっかけとして人と人をつなぐ『橋』としての力があり、心に訴えかける可能性があるからだと思いますね。絵本は子どもが出会う最初のアート作品であり、質の良い出会いの機会が子どもたちには大切なのです」
子どもの頃から良い絵本に触れることは、アートを理解するための土台を作るのに非常に役立つと語るエレナさん。板橋の地に架かる絵本という「橋」は、子どもを成長させながら、芸術として多くの人をつないでいくでしょう。
※国際連合が作成するSDGsについて扱った絵本のリスト