Storyteller
イラストレーター、作家
グスティ
2023イタリア・ボローニャ国際絵本原画展(以下、ボローニャ展)審査員。アルゼンチン出身、バルセロナ在住。芸術活動を通してインクルーシブな社会の実現を目指す非営利団体ウィンダウン-ラ・ベンターナ(Windown - La Ventana)の協同創立者。現在ではアルゼンチン、メキシコ、ボリビア、エクアドル、チリ、ニカラグア、コロンビア、イタリア、スペインなどで障がいを持つ人々のためのワークショップを開催している。
あらゆる人に開かれた芸術の場を目指して
板橋区立美術館で開催された第1回ボローニャ展以来、同美術館は入選作品の原画展をはじめとした様々な展示・企画を行っています。その一つである「夏のアトリエ」は、ボローニャ展の関係者を招いて行われるイラストレーター向けのワークショップです。今回は講師である2023年ボローニャ展審査員のグスティさんに話を聞きました。
「このワークショップのテーマは『インクルージョンを促進する絵本づくり』。絵を描く事は、とてもインクルーシブな行為なのです。たとえば障がいがある人もない人も絵を描くことができますよね。それを遊びの場を通して感じてもらうことが狙いの一つです」
グスティさんは息子との関わりを描いた『マルコとパパ』という作品で知られる絵本作家で、あらゆる人に芸術活動の場を提供する団体ウィンダウン-ラ・ベンターナ(Windown - La Ventana)の会長・創立者でもあります。創立のきっかけは、ダウン症を持つ息子、マルコくんの存在でした。
「マルコが生まれた当時、彼の障がいを受け入れられず、人生がひっくり返ってしまったような気さえしていました。そんな時に友人が、息子と同じような障がいを持つ人が集まれるアートの場を作ろうと提案してくれました」
そうして始まった活動が、グスティさんに変化を与えてくれたと言います。
「皆と一緒に作品を作る中で、どこかで心が通じ合う感覚があり、そこからアートには様々な違いを超えて人々をつなぐ力があると気付きました。マルコに出会えていなければ気付けなかったことです」
芸術活動を通して人のつながりを感じてきたグスティさんは、改めてアートと社会との関係性について語りました。
「アートはすべての人にとって平等です。様々なものを創造する力、さらに疑問に立ち向かう力があります。現代社会には多くの問題が存在しますが、そんな時代だからこそアートを通してつながり、よりよい未来を構想する。それが私たちに必要なことだと信じています」