Storyteller
惠友印刷株式会社 代表取締役
萬上 孝平
ERP(統合基幹業務システム)最大手のSAPジャパン勤務後、2005年に惠友印刷に参画。2018年に代表取締役に就任。以来、絵本のプロデュース事業に力を入れている。2022年に公益財団法人板橋区産業振興公社より「いたばし2022 人と未来を創る会社賞」の表彰を受ける。
転機は、板橋区とボローニャ市との友好都市協定。絵本がもつ可能性に魅せられて
1997年設立、2002年に板橋区に移転した印刷会社、惠友印刷株式会社。板橋区大原町にある工場では本の企画から印刷・製本、出荷までをすべて行っています。創業当時から子どもたちの教育・学習に関わる本の印刷業務を行う惠友印刷ですが、近年では絵本の企画や制作にも領域を広げています。「絵本のまち板橋」を支える企業として、板橋区や絵本に対する想いを代表取締役の萬上さんに聞きました。
「絵本の事業を始めたきっかけは2015年、板橋区と縁の深い中小企業診断士の方から、イタリア・ボローニャ市と板橋区の友好都市交流協定10周年を機に新しいことができないかとお声がけをいただいたことです。そこで私たちは、毎春ボローニャで開催される世界有数の絵本の見本市『ボローニャ・チルドレンズ・ブックフェア』を訪問し、世界中から集まる、才能のある若手イラストレーターを発掘し、一から絵本を作り上げる事業に乗り出しました」
2015年の初訪問から『ボローニャ・ブックフェア』に毎年顔を出し、新しい絵本をつくり続ける惠友印刷。現在では「いたばし国際絵本翻訳大賞」受賞作も手掛けるなど、絵本を通じた活動の広がりが期待されます。また、ビジネスだけにとどまらず、いたばし総合ボランティアセンターへの教育図書寄贈や、通常は捨てられてしまう束見本※を無地の本として安価で販売する「生帳(ナマチョウ)プロジェクト」など、社会に価値を届ける活動にも力を入れています。
「印刷は大量の紙や材料を扱う仕事ですが、完成品以外に各工程で出る端材やアルミなどの資源は、できる限りリサイクルしています。また、将来的には『誰でもクリエーター事業』という、誰でもオリジナルの絵本を作れる事業を始めたいと考えています。絵本と聞くとプロの作家さんが描くものというイメージがありますが、ボローニャを訪問した際に学生や一般の方が自作の絵本を持ち込む光景を見て、絵本を作りたい人が気軽に絵本を作れる環境があればと思ったんです。小部数でも構いません。「良き読者、良き市民を育むための良質の絵本づくり」を掲げ、子供から大人まで、誰もが絵本を身近に感じてもらえる『絵本のまち板橋』を目指して今後も板橋区の絵本文化を盛り上げていきたいです」
※重量や寸法、材料などを事前確認するため、本番と同じ仕様で製作された白紙の仕上り見本。
私の理想のいたばし!
『誰でもクリエーター事業』で多くの人が自分の作りたい絵本を作りたいように作れるいたばしにしたいです。惠友印刷が土台となって、身内向けでも非売品でも、思い出に残るような本の製作をお手伝いできればと考えています。
私のちょこっとSDGs
私たちの工場では、社内の消費電力をグラフとして見える化した電力モニタリングを行っています。社内には大型の印刷機や製本機が多数あり、電力需要がひっ迫した際にはそれらの電源を落として消費電力を低減する必要があるのですが、以前はその調整に苦労していました。しかし電力モニターの導入後は各工程の電力消費量が一目でわかるようになり、皆で賢くスマートに節電できるようになりました。モニターは社内の色々な場所に設置しているので、社員もモニターを見ながら積極的に電力調整を行っています。
Profile
惠友印刷株式会社
パーパスとしては、「グラフィックの力で、人類の知と文化の営みに資する」。アートや教育、モノづくりをキーワードに、人々の能力開発や進歩、自己表現に貢献し、物心両面での豊さを追求する企業を目指しています。