絵本と絵本作家が生まれ続ける、絵本のまち、板橋。
絵本と絵本作家が生まれ続ける、絵本のまち、板橋。
「いたばしさんぽ」のイラストを描いた三浦太郎さんと、板橋区立美術館の2020年「ボローニャ国際絵本原画展」(※)などのグラフィックを担当してきたオオノ・マユミさんに、絵本や「絵本のまち」への想いを聴きました。
板橋区立美術館とボローニャ展での出会いやつながりが絵本文化を生む
三浦:自由に表現でき、長く手に取ってもらえる「何か」を探していて、「絵本」にたどり着いたんです。イタビ(板橋区立美術館の略称)でボローニャ展を見て「これなら自分にもできるぞ」ってすぐに感じました。
オオノ:私はイラストレーターとして子どもに関わりたいと思って絵本づくりをめざすことに。イタビの「夏のアトリエ」で三浦さんをはじめ、様々な専門家に教えていただき、ボローニャ展にも初挑戦で入選をいただきました。
国や言葉を超えて、絵本を通じて、社会とつながる
三浦:海外の絵本をつくるときに言葉を外国語で考えるのは難しい。でも文字がなくても見たときにクスッと面白いなとか、不思議な絵だなって思ってもらえれば、言語で語らなくても伝わるんじゃないかと思うんですよね。
オオノ:私も作家としての1作目は、ボローニャ展での出会いで形になったイタリア語の絵本なんです。赤いちょうちょが好きな場所にお出かけして、おうちに帰るという本当にシンプルな絵本なんですが、身近に感じてもらえるんじゃないかなって思います。
三浦:逆に日本語の本を出版した時には、読者の反応を聞けましたね。子どもが産まれたころに描いた「くっついた」は、「子育てに疲れても、笑ったら疲れもみんな吹っ飛ぶよ」という思いに共感したお母さんやお父さんが、たくさん読者ハガキを送ってきてくれて。ちょうどこのころ、お父さんも子育てに参加するという社会的な動きがあって、絵本を通して社会とつながっているんだと感じましたね。
「絵本のまち板橋」だからこそつながる、絵本とまちとSDGs
三浦:ここ最近は、「絵本」の取組がイタビから外に出て板橋に広がっているのかなと感じますね。
オオノ:すごく楽しいなと思ったのがボローニャ展と合わせて市民が企画する関連イベント「ボローニャ絵本さんぽ」です。地域の方々もふらりと立ち寄られて、「こういうイベントもやってるんだ」と楽しんでもらえて。「絵本のまち板橋」らしい取組のようにも感じました。
三浦:ごみを拾うとか、物を大事に使うとかって、人に言われると義務的になるけど、絵本を読んだり、ゲームで遊んだりする中で、大事なことや優しい気持ちを感じて、心の中にSDGsのタネみたいなものが残る。そこで初めて物を大事にしよう、人に優しくしようって思いが芽生えて、自分としての行動に移せるんじゃないかな。「いたばしさんぽ」の絵を通じて、より盛り上がって楽しんでもらいたいって思います。
※「ボローニャ国際絵本原画展」は、イタリア・ボローニャで毎年開催されている絵本原画コンクールの入選作品による展覧会。板橋区立美術館では、1981年からボローニャ展を開催。
※この記事は2024年3月発行の「いたばしさんぽ」リーフレットより転載しています。