Storyteller
東京家政大学 環境共生学科 准教授
西俣 先子
NPO/NGO「環境・持続社会研究センター(JACSES)」※1に所属し、多くの問題を抱える社会構造の改善をめざす政策提言活動を経て、長岡大学に勤務後、2023年より東京家政大学に着任。環境と経済を専門とし、従来の学問の枠組みを超えた分野横断的な視点で、持続可能な経済発展のあり方について研究している。
※1 1993年設立。地球規模の課題に対して市民の視点から調査研究や政策提言等を行う団体。
持続可能な経済発展を、ローカルの視点で考える
限りある地球資源の中で、いかなる方法をとれば持続可能な発展を実現できるか。その可能性を探る研究に取り組み、未来社会のあり方について学生たちとともに考える講義を繰り広げているのが、西俣先生です。それらの研究や講義のベースとなるものは、現状の経済のあり方への懐疑的な姿勢にあるといいます。
「現代社会において一般的には、GDP※2の成長率で経済成長を測ります。ただ、そういった拡大思考での成長を追い求めていては、資源は限界を迎え、環境にも影響が出るでしょう。これからの経済発展は、量的な拡大ではなく、質的な改善であるべきと私は考えています。環境面とのバランスを取りながら、社会全体の暮らしの質をゆるやかに向上させられるような経済発展が大切です」
西俣先生の担当する講義「持続可能な経済成長」では、板橋区と連携したSDGs教育を行っています。先日、「『絵本のまち板橋』※3によるSDGsローカライズの推進」をテーマにした授業に、環境共生学科の2年生およそ30名が参加しました。学生たちは、板橋区の取組や抱える課題について調べ、区内でSDGsローカライズを推進するための新たな施策を提案。それらを区職員と、いたばしSDGsパートナーである惠友印刷の萬上代表がジャッジしました。
参加した学生たちは「板橋区について詳しく知るきっかけになった」「まちをよくするための企画を考えることが楽しかった」などと述べています。
「例えば『持続可能な社会について考えなさい』というテーマだとすると、壮大すぎて学生たちは混乱してしまいます。ですが、視点を身近なローカルレベルに絞ることで、様々な課題と具体的な解決策を見つけやすくなります。そしてローカルなSDGs達成の積み重ねが、いつか世界を変えていく。学生にはそんな視点をもってほしいですね」
SDGsローカライズの取組が向かう先、2030年の板橋へ。西俣先生はこのように期待を寄せます。
「区民や学生たちが、地域の豊かな環境と経済の両立について、主体的に考え、行動できるような板橋になればと思います。今私たちが提供している教育や行政の取組を基盤として、未来を支える人々が積極的に活動する、自発性の高いまちになれば嬉しいです」
※2 国内総生産。国の経済規模や成長率を測る指標であり、消費、投資、政府支出、輸出入の合計で算出される。
※3 毎年絵本の国際的見本市が開かれるイタリア・ボローニャ市とのつながりや、多数の海外絵本を収蔵する中央図書館、絵本の印刷・製本産業が多く立地するという特徴から、絵本を軸とした文化・産業振興や教育活動を展開し、持続可能な都市の構築を目指す取組。詳しくはこちら。
私の理想のいたばし!
まちの活性化や持続可能な発展に向け、区民みんなが自分で考え、集まり、ともに行動する「自発性の高いまち、板橋」へ。
私のちょこっとSDGs
普段の買い物をする際、例えば地産地消のものを選べば、物流にかかるエネルギー消費を抑えられますし、有機農産物を買えば、持続可能な農業を支えることにも繋がります。「消費は投票である」※4という意識をもち、未来社会がよりよくなるような購買を心がけています。
※4 購買行動が、未来社会のあり方につながるという考え方。環境や社会、人権に配慮した商品やサービスを選ぶ消費行動(エシカル消費)を促す言葉として扱われる。